通いたくなる町、大曲。〜 FOGcoffee 〜
大仙市大曲の「職人商売 ミンカ」を出て、丸子川を渡り、FOGcoffeeへ。
この日は、春分の日も近く、ホントあったかい日でした。
川のたもとに車を停めると、どこからともなくギターの音が聞こえてきます。
店内からは、笑い声も聞こえます。
間口は一軒くらいでしょうか。FOGcoffeeは、決して大きいとは言えないコーヒースタンドに、ゆるやかに人が集まっています。
「いいね、このギター。え、置いていくの?」
お客の一人がギターを置いて帰ってしまいました。
そのあと、作業着を着た男性がふらっと店に入って来ました。
「どうした? そのギター」
いうや否や、ギターを手に、ポロンポロンと弾き始めました。
「けっこう、いいっすよ」
「だな、わるぐねぇな。ちっせぇけど、いい音するな」
そんなやり取りをしながら、店の時間が流れていきます。
ブルーのマグに、たっぷりとコーヒーを淹れてくれます。
FOGcoffeeの店主とは、お話したことはありましたが、お会いするのはこれが初めて。
FOGは霧という意味。
「確か、サンフランシスコの霧から来ているんですよね」
「実は俺、スケボーが好きで、プロになれたらなぁなんて、思っていたこともあったんです。スケボーも好きだったし、コーヒーも好きで。サンフランシスコはスケボーも盛んだったし、コーヒーの店もたくさんあったので、自分の好きなものが両方あったんです。いっつも同じ店で同じコーヒーを飲んでいましたね。あの頃は」
サンフランシスコは霧の街。
霧の中でコーヒーショップを訪ねて、勉強していたんだなぁと、感心。
「アメリカなので、大雑把なコーヒーを出す店もあったのですが、中にはすごく丁寧に淹れてくれる店もあって。そこが好きで影響を受けましたね。その店が、ブルーボトルコーヒーです。あの頃は、まだ日本に店を出す話もなかったと思うなぁ」
ブルーボトルコーヒーには、すごく影響を受けたそう。
日本に来てからも、山形、盛岡、同じ秋田県内などの、コーヒーを飲み歩いたようでした。
これまでの道のりを淡々と、隠すことなく話してくれると、こちらも心を開いてしまいます。
隣のお客さんは、もうすっかりギターが手に馴染んだようです。
ギターの音色が、店内にいいグルーブを作り出していました。
帰りがけにすれ違いで店に入って来た若い男性は、
「今日いいことがあったんですよ。なんとキックフリップができたんす!」
「おお! 気持ち良いだろう! 世の中には、キックフリップができる男とできない男がいるんだ! 知っているか!」
「俺、できるっす!」
私はよくわからないけど、キックフリップは、スケボーの技なのでしょう。
「ビール!」
「いいなぁー! この時間からビールかよー!」
カウンターに、栓を抜いたハートランドビールが出てきます。
美味しいだろうなぁ。
ギターの音と、コーヒーと、ビール。
なんていい一日だろう。